2012年9月16日日曜日

黒部川 上ノ廊下 遡行(2)

9/8 
スゴの淵手前のC2(7:00)~スゴの淵(7:30)~岩苔小谷出合(8:40)~立石奇岩(10:00)~B沢出合 (12:30)~大東新道合流地点(12:50)~薬師沢小屋(16:30)
天気よし。さっそくスゴの淵。右からへつる。水も少ないせいか特に困難はない。
淵を過ぎると谷に陽がさしてきた。赤牛沢と出合う頃は暑くなってきた。
朝一番のスゴの淵。右壁をへつる。

まもなく立石。岩苔小谷が左から出合うと、まもなく大きな淵が現れる。エメラルドグリーンが美しい。ここを過ぎたところで、川幅は狭いが流れが速くなっているところがあり、足を沢に入れただけで体が持って行かれそうになる。万全を期し、ロープをだして振り子で徒渉するがバランスを崩す。これが黒部の流れだ。
エメラルドグリーンの大淵

一時間ほど歩くと柱状節理の岩肌が見え始める。幾何学的な花崗岩を縫って水が流れる。何段にもなって落ちてくる特徴的なカスケード状の滝を過ぎると間もなく立石奇岩が見えてきた。
大迫力の立石奇岩を眺めて一服。ここまで来るとすでに上ノ廊下もフィナーレという気分になる。遠ざかってみると奇岩はまるで針のようだ。
カスケード状の滝





迫力の立石奇岩

しばらく巨岩の河原を進むと、やがて、流れも穏やかになり、下部の激流とのギャップを感じる。この渓相の変化もまた上ノ廊下の大きな魅力なのだと思う。
穏やかな流れとなった上ノ廊下

B沢付近の通常懸垂下降を強いられる場所も今日は胸までつかりながら水線通しに進む。大東新道と合流すると絶好のテン場。A沢出合付近にさっそくテントを張り、釣りをしていると、ここは幕営禁止と言われ、しぶしぶ薬師沢小屋へ移動。気持ちを切り替えて、相方と二人で2ℓのビールで乾杯。ここ数年、毎年の目標となっていた上ノ廊下遡行を祝った。


9/9 
薬師沢小屋(6:30)~赤木沢出合(7:30)~大滝(9:00)~登山道(10:50)~黒部五郎岳 (12:40)~黒部五郎小屋(14:30)~三俣山荘テン場(17:00)
今日は黒部川から別れ、赤木沢を遡行することとした。赤木沢出合は大きな淵。川幅いっぱいの滝は黒部の中でももっとも美しいところ。赤木沢は赤っぽいナメ滝で始まる。気持ちの良いナメ滝をいくつも越え、やがて大滝。巻き終えると落とし口の向こうには奥ノ廊下をはさんで黒岳、祖父岳、そして黒部源流の鷲羽岳が見える。コバイケイソウの群落の源頭を詰め、登山道に合流。三日間の沢登りを終えた。
赤木沢出合の淵

美しいナメ滝が続く赤木沢


沢中に比べるとにぎにぎしい登山道を辿り、黒部五郎のピークを踏む。天気はやがて雨となった。カールはコバイケイソウの黄色に彩られ、天気がよければ安らぐところだ。
三俣山荘に着くころには雨が上がり、上ノ廊下の源である鷲羽岳が大きい。去年と同じ場所にテントを張る。夜はまたしても満天の星空。4日間の沢旅が終わった。

鷲羽岳と三俣山荘。この山旅ももうすぐ終わりだ。


9/10
三俣山荘テン場(5:30)~三俣蓮華岳(6:50)~鏡池(10:00)~わさび平(12:00)~新穂高温泉 (13:15)~松本(16:30)
松本で思う存分打ち上げ。
4泊5日の近年にない長い山行だった。ここ1か月ほどはいつでも上ノ廊下が頭の中にあり、準備をしてきただけに、完徹した満足感も大きい。
さて次はどこを目標にするか相方と話しながら、ビールが次々と吸い込まれていった。

黒部川 上ノ廊下 遡行(1)

9/6 黒部ダム~奥黒部ヒュッテ テン場C1
9/7 奥黒部ヒュッテ~金作谷出合~1692地点の先C2
9/8 C2~立石~A沢出合~薬師沢小屋
9/9 薬師沢小屋~赤木沢~黒部五郎岳~三俣山荘テン場C4
9/10 C4~三俣蓮華岳~双六小屋~鏡平~小池新道~わさび平~新穂高温泉


黒部、念願の上ノ廊下へ。
一昨年は大雨のため中止、昨年は増水もあり、最初の徒渉もできずに東沢へ転進。
3年越しの今年は、遡行時期も考慮し、そして体力面での準備もおこたりなく、万全の心構えで臨んだ。あとは天気を祈るのみ。

9/6
黒部ダム(8:00)~平の渡し(12:00)~奥黒部ヒュッテ(14:00) 
「山を想へば人恋し、人を想へば山恋し」百瀬慎太郎の記念碑のある信濃大町駅を今年も朝一のバスで出発。
昨年の記憶もまだあたらしく、奥黒部ヒュッテへの道を辿る。平の渡しまでは雨。昨年を彷彿とさせる天気だ。しかし、12:00の船に乗り込んで対岸に渡っている最中に雨が上がる。
奥黒部ヒュッテについた頃は晴れ間も覗く。小屋の方に聞くと、ここ2日で雨があり、少し増水しているかも、とのこと。明日の天気を案じながらテントに入る。

9/7 
奥黒部ヒュッテ(6:30)~口元のタル沢先のゴルジュ(9:30)~廊下沢出合(10:00)~スゴ沢出合(11:00)~上ノ黒ビンガ (11:20)~金作谷出合(12:40)~C2(15:00)
6:30。晴れ。今年こそはという思いが高まる。東沢を下降しいよいよ最初の徒渉。去年はここすらも渡れなかった。緊張が走るが、今年はやはり水量が少なく、スクラムで難なく渡り終える。これからが勝負なのだが、なんだかちょっとした感動を覚える。
朝の谷。上ノ廊下に降り立つ。今年は最初の徒渉に成功。

上ノ廊下に来られたことを実感しながら広い河原を進む。透明な水が、朝の陽にきらめく。光が差し込んだ谷はとてもきれいだ。

一時間ほど歩くと、そそり立つ下ノ黒ビンガが見えてくる。木々に囲まれた岩は垂直にそそり立つ。大迫力の景観を眺めながら進む。
下ノ黒ビンガが見えてくる。

9:30。順調に進み、一番の難所である口元のタル沢の先のゴルジュに到着。やはり水量が少ないようで、右岸の進めるところまで進み、途中から左岸に胸まで徒渉。相方がロープをつけ、左岸をへつる。最後はロープが足りなくなり、水心を避けて飛び込み、泳いで右岸に渡り突破。ここは時間を要すると思っていたが順調に突破できた。

核心部。口元のタル沢の先のゴルジュ。水量も少ないようだ。


深い淵は緑色が美しく、岩肌を削り滝が流れ込んでいるのも印象的だ。

ずぶ濡れとなり、日なたが恋しく歩を進めると間もなく廊下沢が出合い、旧黒五の広々とした河原へと着いた。今日の核心を過ぎ、そして開けた景観になごむ。行く先には北薬師から連なる稜線が見えてくる。

旧黒五。開放的な風景になごむ。

やがて、一枚スラブのスゴ沢を見送ると、いよいよ上ノ黒ビンガが登場。この圧倒的なスケール感。両側にせまる屏風、切り立つ岩肌をを縫って流れ落ちる滝。不思議な大自然の造形。

圧倒的なスケールの上ノ黒ビンガの岩壁

上ノ黒ビンガ。滝が岸壁の間から流れ落ちてくるようだ。


12:40 夢中になって歩き、気がつくとすでに金作谷の出合。金作谷は彼方上方に雪渓が残っている。一息ついて、金作谷の先のゴルジュを突破したところまで今日は進むことにする。

清冽な水と白い花崗岩が織りなすゴルジュを2度ほどの泳ぎと飛び込みを交えてクリア。スゴの淵の目前のところでテントを張ることにする。

薪は豊富。焚火で暖をとる。山頂の方の雲が稲光に反射し、雷鳴もなく時折フラッシュのように光っていたが、やがて雲も去り、星がでる。天の川も見え、寝転がっていると1つ2つと星が流れる。流星を見たのは何年ぶりだろう。満天の星空で充実した一日を終えた。

金作谷の先のゴルジュ。

岩と木々が織りなす独特の風景





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